【問題】
ソフトウェアライフサイクルプロセス
ソフトウェアやシステムのライフサイクルプロセスの標準的な枠組みを提供するISO/IEC 12207 や ISO/IEC 15288 などの国際規格に準拠して、プロセスを定めてプロジェクトの管理を行うことの効用と弊害をそれぞれ 25 字程度で述べよ。ただし、弊害についてはその原因も含めて述べよ。
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【解答例】
効用の解答例
・海外発注の際、工程や作業内容の認識の齟齬を防止できる。
・国際標準が共通の基盤となり、当事者間で確実に意思疎通できる。
・国際標準に準拠しているので、開発支援ツールの選択肢が広がる。
・支援・組織・監査など含め、全体プロセスを体系的に整備できる。
・品質保証の活動や方法などを、当事者間で確実に合意できる。
弊害の解答例
・規格に縛られてしまい、プロセスのテーラリングがおろそかになる。
・規格に縛られてしまい、自部門の製品の特徴を考慮しなくなる。
・標準に安住してしまい、プロセス改善が進まなくなる恐れがある。
【解説】
本問題は、ソフトウェアやシステムのライフサイクルプロセスを、国際標準に準拠して標準化することの効用と弊害を理解しているかどうかを問う問題である。
ソフトウェアやシステムは、その構想から廃棄までの活動が多岐にわたる。このため、プロジェク
トに関わる当事者すべてが、ライフサイクルプロセスを共通に理解してプロジェクトを進めることが重要である。
特に、国際的な協業や受発注を伴う場合、当事者間のライフサイクルプロセスが異なることから生じるコストの増大や品質面の混乱を未然に防ぐことが重要である。
国際的に標準化された規格に準拠することによって、国境をまたいだ当事者間で開発手順、工程、作業内容、用語などの整備と共通理解を促進することが容易になり、プロジェクトの円滑な運営が期待できる。また、国際規格に準拠したプロセス管理やプロジェクト管理を支援するツールも整備されているため、採用するツールの選択肢も増えてくる。
一方、国際規格に過度に依存することで生じる弊害にも目を向けておく必要がある。
個々のソフトウェアやシステムそのもの、そして、それらに関係する開発組織は多様であり、常に進化していくものである。
したがって、当事者の製品や組織運営の目的に応じて、国際規格に定められている包括的なライフサイクルプロセスを、当事者向けにテーラリングすることが必要である。
規格に縛られてしまっては本末転倒である。ライフサイクルプロセスを標準化することによって、プロジェクトの混乱を防ぎ、一定の品質を確保する効果が期待できるが、定めた標準に安住することなく、変化する外部環境に合わない部分は、常に改善していくことが肝要である。[/wpex] |
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